絵画購入のススメ。


 

こんばんは。

今年は涼しい雨のお盆ですね。室内よりも外の方が涼しいことが驚きです。

みなさまお元気でしょうか。

千葉にも緊急事態宣言が出てしまい、お客さまも少なめな最近で、素敵な展覧会を開催しているだけに悔しく寂しいものがあります。

多くの方にぜひいらしてください、と言いたいところですがなかなか言い難いのが辛いですね。



こんな風に遠出がなかなか出来なくなると、意外といらっしゃるのが地元の方です。

お散歩がてら画廊を見つけてくださり「ここは何なのだろう」と興味を持ってくださる方もちらほらおります。

そういう方々が必ずしも絵を買い慣れているわけではなく、むしろ全く買ったことがない、そもそも絵を買うという発想がない、という方も多いです。

しかし中には「買ったことがないけれど、少し興味がある」というお客様もいます。

こういったお客様とお話をしてみると、興味はあるけれど買ったことがない理由として多いのが「飾る場所がない」ということです。

もちろん安い買い物ではないため「安易にお金を出せない」という理由もありますが、それ以上に「せっかく買っても家に合わないのではないか」という心配の方が多い印象があります。


そういう時私は「本当に『好きだな、欲しいな』と思う絵と出会うまでは買わなくても大丈夫だと思いますよ」とお伝えしております。

そして続けて「ただもし本当に『好きだな』と思う絵と出会えたら、その時は『家に合わないかもしれない』という心配はせず買ってみてください。ご自身で好きになった絵なら、ご自身のお家のどこかには必ずはまる場所があると思うので。」

とお伝えするようにしています。

これは私自身の経験であり、絵を買われるお客様からの経験談でもあります。

絵に限らず、自分が「好き!」と思ったものが自分の選択の集合体である自分の家や部屋に全く合わないというのはむしろ珍しいことではないでしょうか。

もちろん「リビングに飾りたい」など絵の置き場を最初から限定して選ぶ場合は別です。

前にも似たようなことをもう一人の店主が書いておりますが、好きな絵を一枚選ぶときは「もし無人島に1枚持っていくとしたら…」という想像をして選んでみると良いかもしれません。

飾るシチュエーションよりもまず、ご自身の心の中に飾りたい絵を選ぶことができると思います。

そうやって選ばれた絵はその人の居住空間のどこかにきっと居場所があるはず、そう思うのです。


これは書きながら思いついたことですが、もしそれでも「リビングに何かを飾りたい」という風に場所を優先させなければならない場合、いきなり絵を選ぶのではなくまずはそのリビングに合う空の額縁を買って飾ってしばらく暮らしてみるのはどうでしょう。

そしてその額縁に合う絵を探してみるのも面白いかもしれません。

ひとつの額縁と相性の良い絵というのは無限にあります。

その無限の可能性の中からひとつを探して街の画廊を歩いてみると、今までとは違う絵の見方ができるかもしれません。

そしてもし「これだ!」という絵と出会ったとき、その「これだ!」の理由を考えてみてください。

きっとそこにはあなたの「好き」が隠れているのではないでしょうか。


上記例は本当に思いつきですが、少しでも自分が「好き」で「選ぶ」ということに慣れる人が増えてくれたら…と個人的には思います。

前にも書きましたが「選ぶ」とは一種の自己表現だと考えます。

現代社会は様々な人々による個々の「選ぶ」の連鎖で成り立っています。

これは芸術の話に限らず、政治にしても経済にしてもそうです。

選ぶことができるのに選ばないでいること、これは「好き」の反対である「無関心」つながると思います。

無関心でいることはその対象ジャンルの中で、その人は「いない」と同じです。

芸術に無関心であれば芸術界の中にその人は存在しないのと同じと言え、これは社会のあらゆるジャンルで同様のことが言えるのではないでしょうか。

「選ぶ」ということは、簡単なことなようですが、選択者の存在を支える大きくて本当に大切な役割があると思います。

自分の「好き」に耳を傾け、判断し、「自己表現」として物事を選んでゆく。

社会を生きる上で必要不可欠なこの力を養う近道は、きっと芸術にあると思います。

絵画に限りませんが芸術作品を購入すること、これは人間として社会を生きる術が最もシンプルかつ直接的に現れた行動なのかもしれません。


小難しいことを書きましたが…

単純にもっと自分の「好き」を自分で肯定して良いんだと、絵の購入ってそういうことだと、私はそう思います。



企画画廊くじらのほね

飯田未来子

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